日蓮宗 一乗山妙法寺

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  • 異体同心なれば万事を成じ・・・(機関紙 本門 第164号掲載)住職 井村一誠

    2018年01月04日

    法話

    昨年、妙法寺は十月二十二日に日蓮大聖人七三六遠忌のお会式を行いました。九月の初め頃から檀信徒の方々の協力によって、お会式桜の作成に取り掛り、月の終わり頃には完成して、十月六日の法座には、祭壇に二本の満開のお会式桜が飾られました。

    こうして着々と準備を重ね、気分も盛り上がっていたところへ、日本列島の遥か南方にある台風の動きが怪しくなりました。お会式一週間前位から伊勢湾台風と同じコースを辿ると報道され、この季節の台風としては最大級、台風の頭に超がついて超台風となりました。この地方には平成十二年の東海豪雨以来、記録に残るような災害は起きていませんし、今回も心配する程でもないと高を括っていました。ところが、時が経つうちに他人ごとではなくなり、二、三日前には最悪の事を考えなければいけないような状況になってきました。

    法華経では、こうした自然界の現象も、その影響を受ける人にとって、自身の心の在り方と無関係ではないと教えられていますので、厳しい現実を突きつけられ、反省懺悔の機会を与えていただけるのは実に有り難いことです。

    しかし、事が「日蓮大聖人七三六遠忌」の行事だけにこの台風は実に恨めしく残念に思えてなりませんでした。自身の個人的なことで不利益を被るならともかく、それも本化上行菩薩(日蓮聖人)のお心(お題目)を伝え、久遠本仏の願いを叶えるべく行事を企画し、開催しようとしている住職としては何とも情けないことでした。「ここまで準備を重ねてきて、あと一歩のところで何故?」法華経守護の諸天善神様に対してこういう時こそ御守護の姿を見せていただきたいと、真に思いました。

    しかし、主催者としては最悪の事も考慮に入れなければなりません。中止にはできないので、一週間の延期にすることも考えましたが、強行して参拝者が来なくてもご奉仕の方々がいらっしゃれば法要はできるので、法話は住職が勤めればよいと考え、最悪でも何とかなりそうだと見通しを立てました。

    前日には、御本尊様、諸天善神様に精一杯の御供養を捧げ、今後の精進をお誓いするとともに、七三六遠忌の行事が無事に成就できることを祈りました。超台風が、虎視眈々と東海地方直撃を思わせる中、前日準備のため、男子部、女子部、青年部等のメンバーが駆け付け、それぞれの役割分担で準備が整っていきました。

    「住職、山門の幕と玄関幕どうしますか、張りますか?」「明日、風が吹いていると張れなくなるから、今日張っておきましょうか」「風雨が強くなると破れるかもしれませんよ」と、指示を仰がれ、「ハイ、お願いします」と、御本尊への誓いが言葉になりました。

    準備は整いました。三時頃、特別法話の法話者である大阪の村尾上人に様子をお聞きしますと、「明日は、新幹線が止まる可能性があるので、ひとまず行けるところまで自家用車で行きます」と、力強いお言葉が返ってきました。「以心伝心」か、胸が篤くなる思いで「お待ちしております。よろしくお願い致します」と返事をしました。

    いよいよ当日案の定雲行きは悪く、超台風の風の唸りがする中、八時頃お勝手の女性陣がまず昼食の準備に、次々と集まってきました。超台風を気にする雰囲気は更々なく、割烹着を着け、自分達に与えられた仕事を着々とこなしている様子は実に有り難く、頼もしく見えました。

    お昼近く、式衆のお上人方も一人、二人と集まり、あるお上人が「住職、先程のニュースで台風のスピードが少し遅くなったようですよ」と伝えてくれました。この一言は、「異体同心なれば万事を成じ」とある日蓮聖人御書「異体同心事」の一節、身体はそれぞれ異なっても、心が一致協力しあえば何事も成就できるということが思い起こされ、安堵しました。

    予定どおり十二時三十分より法要が粛々と始まり、十四時三十分頃、村尾上人の法話が始まる頃愛知県地方に暴風雨警報が発令されたと聞きました。三十分早く終われば何とかなる、感謝、感激の一瞬でした。「異体同心事」の一節が脳裏に浮かび、思わず御本尊様に更なる精進をお誓い致しました。

    今回、日蓮聖人七三六遠忌のお会式を住職、檀信徒が一つの心になって(異体同心)盛り上げてきました。その篤い思いが通じてか、この悪天候の中、超台風の来襲を物ともせず、六十余名の方々にお参りをいただきました。こんな力強い応援はありません。超台風の圧力も、「お題目を信じ・唱え・伝える」の心で万事に当たれば、何事も成ずることができる、乗り越えられないものは無いということでしょう。

    後日談で、家内の妹親子は、超台風来襲の中、我が身の危険を顧みず、暴風雨警報の中、松阪まで車で帰って行ったそうです。交通量が少なく、いつもより早く帰れたと喜んで電話がありました。

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