日蓮宗 一乗山妙法寺

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  • 病によりて道心はおこり候(機関紙本門第165号掲載) 住職 井村一誠

    2018年07月22日

    法話

    いつも明るい笑顔で檀信徒の方たちと接しておられた、坂としみさんが本年4月14日に亡くなられました。妙法寺で15日通夜、16日告別式を行いました。通夜・告別式ともに大勢の皆さんが参列され、生前のとしみさんの人柄が偲ばれました。

    平成24年5月頃、肺に水が溜まる癌を発症されました。平成27年1月発行の「本門158号」の中で「私は一生肺癌と仲良くつき合い、病魔に負けないようにしっかりとお題目を唱えて行きます」と綴っていますが、6年間の闘病生活の中、66歳の人生を閉じられました。はち切れんばかりの体格で元気な姿のとしみさんに、もう会うことができないと思うと寂しい限りです。

    としみさんと癌との取り組みを振り返ってみますと、癌を発症して2年目の平成26年9月頃、ご主人が37年間務めた会社を定年退職されたことを機会に、二人で毎日お寺の朝勤に参加されるようになりました。この時のことを「本門160号」の中で当時の様子を綴っています。

    「私は、毎日朝勤に参加して、お題目の良薬を飲んでいるお陰でしょうか、病院では3年間で4人の先生が変わりましたが、どの先生も若くて私と相性も良くいい先生に恵まれています。先生がよく「あんたは性格が明るいからいいね」と言ってくれます。毎月2回の新しい抗癌剤も、薬が体に合うのか、今のところ副作用も無く体調も良く、今までの苦しみがうそのようです。これも朝晩唱えるお題目のお陰だと思えてなりません」と。

    朝勤が終わった後、日蓮聖人の御書の解説をさせてもらっていますが、当時は「妙心尼御前御返事」でした。日蓮聖人が59歳、身延から重病の夫を持つ駿河の国(静岡県)に在住する妙心尼より干し柿・茄子等の供養を受けられたことに対する御礼と、重病の夫を看病する婦人に対する励ましのお手紙です。

    日蓮聖人は、夫の長患いについて、この御書の中で「この病は仏の御はからひか、その故は浄名経・涅槃教には病ある人、仏になるべきよし、説かれて候。病によりて道心はおこり候か」と、述べられております。その意味は、病気によって仏道を求める心が起こるのである。夫が病気になられたのは、法華経の信仰をおこさせるためのものであったと励まされているのです。

    としみさんもこの御書の解説を聞いていましたから、病状は決して良くないのに信心の心は、お題目を一層真剣に唱える気持ちが高まっていたように思います。正しく「病によりて道心はおこり候」の心境だったと思います。

    今年に入って、としみさんの病状は更に悪化し自宅療養となりました。信仰の仲間は本当にありがたいもので、抗癌剤が体に効いていた頃は、病院通いの足となってくれたり、時にはなばなの里まで出かけ気分転換したり、自宅療養になれば、入れ替わり立ち代わり、見舞いに来て励ましてもらっていました。癌と真正面から向き合い、お題目の力で乗り越えてきました。最後まで泣言を言わず、お題目を信じ唱え、他にも伝える信者であったと思います。

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